メリー・ポピンズ
乾 加津也

好みの映画と心から感動する映画とは違う。
見たい映画といつ見たくなってもいいように、いつまでもそばに置いておきたい映画とは違う。
けれど、ボクにとってそれらをすべて凌駕するのが「メリー・ポピンズ」(ミュージカル風だよ)

ストーリーは単純だし、空想混じりだし、命をかけた信念などないし、
まじめなときにふざけているし、血縁の愛憎を裏返すとこんな感じなのかっていうドロドロの怨念もない。
行き場を失った現代の若者の葛藤でもないし、戦争が踏みにじる人権の痛みでもない。
宇宙人は来ないし、血は飛び散らない。
最後に大どんでん返しもないし、「だれも信頼してはいけない」わけでもない。
(おーい、戻ってこ〜い)

じゃあ何がそんなにいいの?
1.どんなときも前向きに(なれるはず)
  シリアスを否定はしないけれど、どこにだって道はあるっていう。八方塞がりはことばの綾で、ほとんどの人生ならどこかに必ず光が灯る(ものだろう)。家庭教師でも煙突掃除でも銀行家でもいいのだけれど、仕事も人生の貴重な一面なんだなあと。

2.上質な挿入歌
  特に「2ペンスを鳩に」が流れると涙が止まらない(のはボクだけ)。

3.演技力
  ミュージカル風だから相応の演技力が求められる。表情に始まり身のこなし、息を切らすほど大胆なダンスなど、まだまだやれますよ、すら感じさせる完璧だと思います。特にジュリー・アンドリュースとディック・ヴァン・ダイクですよね。

4.大切なことって何だろう
  そういう疑問て大事じゃないですかぁ。真剣に生きてても、現代の毎日が単調なのは致し方なく、なんか違うんじゃないかなって詩を書いたりします。何が答えってわけでなく、答えを探すことのほうが大事で、そういう方向にもっていってくれるんですよね。とても説教じみていながら、大事なことは教えてくれず、「自分で探してね」って、メリーは心の中で言ってくれるんです。

5.明るい別れ
  離別は人生につきものですね。今度クラス別々だね〜から永遠の別れ(死別)まで悲喜交々の人間模様。それでも道は続くから歩きますけど、だったらやっぱり前を向かなくちゃ。そのために姿勢正しく明るくね。メリーポピンズ、さようなら〜

<追記>
「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」は、自分の人生で本当にどうしようもないときにつぶやこうと、あれほど決意して覚えたのに、いつしか忘れてしまった幸せ者なのでした、ちゃんちゃん。


散文(批評随筆小説等) メリー・ポピンズ Copyright 乾 加津也 2011-07-02 17:00:25
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