コトバの山
殿岡秀秋

坂の上で微笑んでいる雲に
吸いこまれそうになる
たどりつくには早すぎる気もするが
そこが頂上だろうか

登りきると
目の前に下り坂
正面にさらに険しいのぼり坂
その上にある四国の形をした雲
今度こそ頂上だろうか
その先にまた
新たな峰が控えているのか

坂の途中で苦しくなる
もどろうとおもえばもどれる
しかしここまできたのだから
もう少しがんばろう
せめて次の坂のてっぺんまでいけば
まわりを見渡せる地平にでるかもしれない

苦しいのに登る
それがはたして快感なのか
それとも頂上に立った気持ちよさが
忘れられないからか
とても登れそうもない山に
手で岩をつかんでよじ登る

あの山もきわめたのだから
この山の頂にも到達できるだろう
荒い息づかいがからだに木魂する

空気が薄くて寒くて
ピッケルが折れて
霧の向こうに
片足だけの靴に砂が溜っている
ここまでたどりついた人がいるのだ
ぼくも
印を残していく
コトバの岩を
ケルンの天辺にのせて










自由詩 コトバの山 Copyright 殿岡秀秋 2011-07-02 06:47:32
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