このやろー
村上 和

蹴っ飛ばすには丁度良い間合いだと思うと
ふいにジェットバスが画で思い浮かんで我に返って
蹴っ飛ばすのは南無阿弥陀仏の意味を調べてからにしようと考えた

部屋を振り返ると
小日向さんのようだと思っていた人が
バイオハザードをやりながら
死ね死ね死ねと楽しそうだった
私がマリオカートをしているときの姿と重なる

困った時に「ふにゅ。」と言ってしまうアニメオタクの彼女は
声優さんをめざしているらしいと一人が言うと
それをスタートの合図のようにみんな彼女の陰口を始めてしまった

私はネット中にやってきたメールを開き
私に気があるのであろう男からの誘いに
高価で美味しい食事とつまらない会話を天秤にかけている

ウィキペディアの最初の4行でお腹いっぱいになったのでと誘いを断った後で
「散歩に行ってくる。」の言葉も届かないみんなを残して部屋を出る
外に出て深呼吸すると
当たり前のように空気が入って抜けていった

散歩に行ったまま戻ってこないママもいると
昔友達に教えてもらったことがある

近くの自販機で珈琲を買うと
ガチャンとファンタグレープが落ちてきた
蹴っ飛ばすには丁度良い間合いだと思い
約束はいらないわを頭の中に流して
足を振り上げる

なんて
林檎さんのようにはいかないもんだ

はっっくしゅん、ちくしょ。


自由詩 このやろー Copyright 村上 和 2011-06-30 12:51:07
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