にじみ出す夜
橘あまね


祝祭をかたどる歌が
背面にひろがる
真っ黒の水面に
跳ねる

雨を待つ暗がりの眼窩から
月がふたつ
とろり、
こぼれおちて
まぐわう男女の
たかまりゆく濃度に似た
風がとてもぬるい

いとしい、ほしい、
ほしい、いとしい、
いとしいからほしい、
ほしいからいとしい、
かなしい、ほしがるからかなしい
かなしいからほしがる

甘い毒をのむように
のどを鳴らしたせいで
あいまいになった輪郭を
取り戻しにでかける
弱気な素足とサンダルの間に
うすく浸透していく暗闇



自由詩 にじみ出す夜 Copyright 橘あまね 2011-06-27 00:10:30
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