ビルのこと
たもつ

 
 
ビルの隣にビルが立っていた。
ひどく咳き込んでいた。
ビルは私に煙草を請うた。
煙草は吸わないのでその旨を告げた。
ビルの隣に建っているビルに入った。
壁の薄汚れたビルだった。
ブリーフィングの資料を早く作りたかった。
三か月後、ビルは組合交渉に参加した。
それから六年後、ビルは腎臓を患い
定期的に透析を受けることとなった。
家族とは既に別居していた。
その時の私は、といえば
治らない円形脱毛症に悩まされていた。
老朽化のために
ビルが取り壊される四年前のことだった。
新しいビルは二ブロック先に建てられた。
その頃になると
ビルとの音信も特になかった。
 
 


自由詩 ビルのこと Copyright たもつ 2011-06-26 20:00:27
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