あす君のそばへ行きたい
ホロウ・シカエルボク
あす君のそばへ行きたい
こまごまとした雑事をすべて
片付けることが出来たら
あす君のそばへ行きたい
ざわざわとしたこころがうまくまとまったら
雨上がりのバス停に腰をおろして
始発のバスで君のそばへ行きたい
どんな言葉ならうまく伝わるだろうかと思案するより
あす君のそばへ行って目の中を覗き込みたい
あす君のそばへ行きたい
僕はどうしようもないのろまで
誰にでも出来ることが上手く出来ない
今度こそと思って必死でやりなおすけれど
結局おなじ息切れの中で舌を垂らしているばかり
あす君のそばへ行きたい
だけど僕のこのいでたちは
どうにも
恥ずかしすぎる有様なんだよ
あす君のそばへ行きたい
きちんと生まれ変わることが出来たら
あす君のそばへ行きたい
どうして僕は
いつも失速してしまうんだろう
何度も時刻表を眺めた
そうすればこころを決められると思って
だけど大事なことはそんなところにはなくて
ぼくは無駄な汗をかいてさらに汚れてしまった
君だっていまの僕を見たらきっと笑うだろうさ
あす君のそばへ行きたい
僕は運命に振り回される哀れな道化じゃない
実質的に
僕は何にも手にしてはいない
僕は誰にも誇れない
僕が手にした誇らしいものは
たいていのひとにはなんのことだかすら判らない
ポテンシャルは
たいせつなものとしか確かに通電しない
あす君のそばへ行きたい
あす君のそばへ行きたい
だけどいまの僕は
誰にもなんにも誇ることが出来ないごくつぶし
バス停で、駅のホームで
空港で、港で
そこから出てゆくものたちをずっと眺めていた
あす君のそばへ行きたい
だけど僕には切符を買う金さえない
おさないころ約束したね
かねもちになるんだって
なにかすごいことをして有名になって
大きなビルのいちばん上でのんびり暮らすんだって
あす君のそばに行きたい
だけど君はきっと
大きなビルより素晴らしいものたちのなかで暮らしを始めているんだろう
ミルク・キャンディと苦いコーヒーで
財布が底をつくような毎日
一枚の小銭が気分を左右したりするような暮らしが
果たして君には理解出来るだろうか
僕は街角に立っている
街角に立って
ある種の条件で手に入れることが出来る
さまざまなウィンドウに囲まれてまごついている
僕に出来ることは
おずおずと自動販売機の前に移動することぐらいさ
あす君のそばに行きたい
物乞いよりもずっとたちが悪い
原子力が僕たちの前から姿を消そうとしている
だけど
僕たちを殺すものはそれだけじゃないだろ
あからさまに危ないもののことしか危惧出来ないなんて
やっぱり僕たちはちょっと出来が悪すぎるんだ
あす君のそばに行きたい
こんな風に戯言を並べてるよりも