猫について。
吉澤 未来
「猫」
猫はきまぐれ
猫はきっと明日を知らない
猫はきっと自分を知らない
だからきっと
自分を知ってほしいと
そう思っている
猫 匂いもない
猫 寂しさをも寄せ付けない
猫 白い芸術家
猫 朝日にまどろんで
夕陽におびえている
猫 欲しいものを欲しいと
叫ぶ素直な存在
猫 顔をくしゃくしゃにして
笑っているけど
月夜の影でひっそりと
泣いている
猫 無造作の愛を
確かめている
猫 心もとない思い
声もかすれて
夢に自らを
埋葬させている
猫
肉のない
やせた猫
家と家の隙間を
ほっつき歩き
夢と夢の隙間に
僕は君を見た
君はありったけの食を
僕らにねだって
腹いっぱいにご飯を
食べていた
でも
いつからか君は
肉のない
小さな猫
君は昼と夜を交替させて
一日の狩人になる
昼は地面にまどろんで
夜は地面にはいつくばって・・・
猫
君は夜しか知らないときがある
だから少年のときの僕には
君が見えないときがあった
猫
君は夜にしか自分を見つけられない。
だから昼間の君は妙に僕にやさしかった
猫
君は夜に思い焦がれて
夜に心を惑わせ奪われ
顔を埋めて狼に変った
猫
僕は夜におびえている君の声が
怖かった
あんなに優しい君だったのに
あんなに怖い声で
泣き叫んでいたよね
自分自身への孤独を支えて
猫
君は永遠の夜の底で
雨のしずくを飲んで
泣いていた
いつもいつも
泣いていた
朝になると
ケロッとした顔で
僕にあいさつしてくれた
僕は
君のその姿を見て
あの時ふと
君は必死で生きているんだって
そう思った