出会い系の女
はだいろ

出会い系サイトで、
女の人と、会う約束をして、
有楽町で、会った。


ぼくが、2番目に好きな本はなんですか、
とメールしたら、
愛読書が、
「火曜日のモリー」だということだった。
写真は遠目で、
さっぱり要領を得なかったけれど、
年は34歳で、
ちょうどよい気もしたし、
ぼくのことをおもしろがってくれて、
会ってみたいと言われたので、
ぼくも会ってみたいですと返信して、
それで、
ビックカメラで待ち合わせることになった。


ぼくは、
好きな人と、付き合ったことがない。
というか、
好きな人と、付き合うということが、
できるはずがないと思っている。
自分のこころが、恥ずかしさのあまり、
磁石の同極のように、激しく反発し、
いつまでも遠ざかってしまう。
もし永遠という概念が実在するとしたら、
好きな人との距離だ。


だから、
ちっとも、好きじゃない人と、
付き合っているのである。
待ち合わせに来た女のひとは、
まるで、
つくしんぽうのように、
見た目も、
考え方も、
こわばって立ち尽くしているような、
34歳の、
魅力のない人だった。
(もちろん、相手さまも、
ぼくのことを、ちっとも感心しなかったであろうことは、
つけくわえておきます。)

銀座の地下のバーみたいなところで、
にんにくの油あげみたいなものを食べた。
カップル席みたいなとこに案内されたが、
ぼくはそうゆうふうに見られた事さえ、
おおいに不満だった。


形だけのあいさつメールをして、
もうそれっきりだなと思ってたのに、
一週間くらいして、
メールが来たのでびっくりした。
無視した。
出会い系もすぐ退会した。
ひどい話だろう。
でも、人間なんて、もともとひどいものだよ。
やさしい人なんて絶対にいないよ。
ただ、他人よりも自分にほんのすこし、
正直な人がいるだけだ。





自由詩 出会い系の女 Copyright はだいろ 2011-06-22 21:02:21
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