ブラジル担ぎ
たもつ



玄関の前にブラジルが落ちていた
おそらくブラジルから
何かに運ばれてきたのだろう
ブラジルに住んでいる人や他の生き物も
ブラジルが見つからなくて大変だろう、と思い
お役所に電話してみたけれど
親切に他のお役所を紹介してくれたり
担当者の不在を教えてくれるだけで
その優しさに心が温まって終わる
家族の者に相談しようとしても
住民票を紛失したかのように
誰も帰ってこない
宅配便で送ろうとして規格外だと断られる
飛行機に乗ってブラジルまで持って行くには
積みこめる大きさではないし
何より行き先のブラジルは今ここにある
やはり海に浮かべて
筏のようにして運ぶしかないのかもしれない
担ぎあげて海へと歩き始める
こんな時に限って昨日よりも暑い
流れる汗を拭いてくれる人にも会わない
そのくせオールをくれる人はたくさんいる
海はさほど遠くないはずなのに
むしろ好んで
逆方向に歩いている気さえしてくる



自由詩 ブラジル担ぎ Copyright たもつ 2011-06-22 19:18:32
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