待つということ
電灯虫

チッチッと時計の秒針が回ってる。
音が他にないから
チッチッは目立って聞こえる。
部屋の空気は密封されすぎて
部屋に詰められている。
部屋の中は複数の棚があり
各棚には無数の人形が置かれている。
日本人形からフランス人形
リカちゃんからぺこちゃん
カエルからガメラまで
棚の奥行きを活用し
三列に渡って置かれている。
掃除はされていない。
そのために各々の人形の頭や各棚には
見て分かる程度に埃が積もっている。
レジらしき場所の奥は
一つの机に一つの大きな書類棚がある。
棚に入っている各書類の紙の色は黄色くなっていて
埃と紙の色が時計が独りでに刻んできた
長い秒数に寄り添っている。
机に置かれた雑記帳は開かれて
そのページには事の顛末が書かれている。
角ばったロボットの
背中に背負ってるぜんまいが
ギリっと一回分回り
右足が一歩出て
バランスを崩して倒れる。
起きた風で
積もった一部のほこりが舞う。
何かの契機になれればと
不器用に願っている。
部屋の秒針は今も 今からも
時を一秒ずつ刻んでいる。
チッチッと目立つ音は
音が目立たてないその日を
今も諦めていない。
ドアが閉じられて
進まないために周囲から浮いた部屋は
鳴り続ける秒針に
何もかもを預けて待つ。


自由詩 待つということ Copyright 電灯虫 2011-06-16 23:49:46
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