おやすみ
電灯虫


汗一杯かいてたから
今日も一所懸命に遊んできたんだろう。
キラキラした顔で 
今日の出来事を一所懸命喋ってくれた。
後で隣の薬局屋さんに
シャボン玉 買いに行くって宣言して
大好きなヒーロー抱いて 
寝息立てて
口を半開きにするくらい 
どんな夢を見てるのか。
小さく上下する寝息に手を添えて
おやすみ と一声かける。



ソファーで寝ることだけに専心してる。
着の身着のまま 靴下半端で。
チカチカ点滅してる 貴方の携帯電話が
私の気持ちを今も伝えている。
まあ 一段落したみたいだし
今日のところはいいか。
メモを置く代わりにメールを一通送って
前髪触って おやすみを言う。



エコで開けた窓から
間を置いて感じる 
短い風が心地いい。
地球が回って 角度変える陽に
机ごと照らして貰って
おやすみ と言ってもらい
ウトウトする。



早朝六時を伝える黒電話音が
起きろと耳元でけたたましく伝えてくる。
ぼやって感じでTVを付けて
ニュースが流れる中
あと十五分は眠っても大丈夫だって
おやすみのご宣託を受けてしまったから
ありがたや と感謝して二度寝る。



郊外のショッピングモールで遊んだ帰り道
混んでる道を少しずつ少しずつ進む中
他の皆は僕に運転を任せて熟睡してたから
CDから流れるアイドル音楽を聴きながら
左側の海の向こうに沈む夕陽に
センチメンタルに おやすみと言ってた。



初めて泣いた本を読み終わった。
本好きになるきっかけとなった出来事で
拡がる穴を埋めるように本に入ってた。
もったいなくて 読み終わりたくないまま
最後のページを開けば
また読む日まで 
おやすみと 本の表紙と一緒に閉じる。



ふっと目が覚めて
起きようか迷ってると
向こう側から漏れる
瞼を通ってくる光が遮られて
大きい手が頭を撫でる。
どっかに行ってた眠気が
羨ましがって飛んできたから
言われない おやすみに従って
眠っていく。



眠ってたのかどうかは
体に残る感触で確かめる。
おやすみの言葉が
そっと気持ちにかけられて
器の中で回る水のように
巡り巡るから
そこに生まれる力を爪先まで通して
おはよう と言う。


自由詩 おやすみ Copyright 電灯虫 2011-06-15 23:19:03
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