おやすみ
電灯虫
*
汗一杯かいてたから
今日も一所懸命に遊んできたんだろう。
キラキラした顔で
今日の出来事を一所懸命喋ってくれた。
後で隣の薬局屋さんに
シャボン玉 買いに行くって宣言して
大好きなヒーロー抱いて
寝息立てて
口を半開きにするくらい
どんな夢を見てるのか。
小さく上下する寝息に手を添えて
おやすみ と一声かける。
*
ソファーで寝ることだけに専心してる。
着の身着のまま 靴下半端で。
チカチカ点滅してる 貴方の携帯電話が
私の気持ちを今も伝えている。
まあ 一段落したみたいだし
今日のところはいいか。
メモを置く代わりにメールを一通送って
前髪触って おやすみを言う。
*
エコで開けた窓から
間を置いて感じる
短い風が心地いい。
地球が回って 角度変える陽に
机ごと照らして貰って
おやすみ と言ってもらい
ウトウトする。
*
早朝六時を伝える黒電話音が
起きろと耳元でけたたましく伝えてくる。
ぼやって感じでTVを付けて
ニュースが流れる中
あと十五分は眠っても大丈夫だって
おやすみのご宣託を受けてしまったから
ありがたや と感謝して二度寝る。
*
郊外のショッピングモールで遊んだ帰り道
混んでる道を少しずつ少しずつ進む中
他の皆は僕に運転を任せて熟睡してたから
CDから流れるアイドル音楽を聴きながら
左側の海の向こうに沈む夕陽に
センチメンタルに おやすみと言ってた。
*
初めて泣いた本を読み終わった。
本好きになるきっかけとなった出来事で
拡がる穴を埋めるように本に入ってた。
もったいなくて 読み終わりたくないまま
最後のページを開けば
また読む日まで
おやすみと 本の表紙と一緒に閉じる。
*
ふっと目が覚めて
起きようか迷ってると
向こう側から漏れる
瞼を通ってくる光が遮られて
大きい手が頭を撫でる。
どっかに行ってた眠気が
羨ましがって飛んできたから
言われない おやすみに従って
眠っていく。
*
眠ってたのかどうかは
体に残る感触で確かめる。
おやすみの言葉が
そっと気持ちにかけられて
器の中で回る水のように
巡り巡るから
そこに生まれる力を爪先まで通して
おはよう と言う。