むすんで ひらいて
乱太郎

 むすんで ひらいて

むすんで ひらいて 手をうって むすんで またひらいて 手をうって、その手を 上に
むすんで ひらいて 手をうって むすんで


     *


  結んでくれと哀願した君の視線は天井に
  満天の沁みに夫の顔でも浮かんできたのか
  舌を出して虚ろ気味の瞳
  ベッドの柱に囚われの垂れた睡蓮


     *


  開いて零れる君の唾液
  顎の先から舐めてやれば
  紅い唇の奥で舌が悶えている
  掌はむすんだままだ


     *


  手を打ってやれば紅潮していく君の悲鳴
  鴉が夕焼け空に描いた橙色は棄てた恥じらい
  捻じれいく塊りは
  過去の契りを千切ろうとしている


     *


  蒸すんでいくのか私の舌に
  熱く芯から焦がれていく様に余計悪意が煮えたぎる
  蝋燭でさらに燃やしてあげよう
  生贄の魔女として


     *


  股開いて濡れたシーツ
  ヴィーナスを運んだ帆立貝の鍵を捨て
  泡となって君は幻想の海で泳ぐ
  母であり妻であった写真立てを伏せて

     *


むすんで ひらいて 手をうって むすんで またひらいて 手をうって、その手を
 下に むすんで ひらいて 手をうって むすんで



君と歌おう この唄を
私の肉欲のみにくいあひるの子よ
勝ったほうが先にこの部屋を出ようではないか


自由詩 むすんで ひらいて Copyright 乱太郎 2011-06-15 19:21:19
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