むすんで ひらいて
乱太郎
むすんで ひらいて
むすんで ひらいて 手をうって むすんで またひらいて 手をうって、その手を 上に
むすんで ひらいて 手をうって むすんで
*
結んでくれと哀願した君の視線は天井に
満天の沁みに夫の顔でも浮かんできたのか
舌を出して虚ろ気味の瞳
ベッドの柱に囚われの垂れた睡蓮
*
開いて零れる君の唾液
顎の先から舐めてやれば
紅い唇の奥で舌が悶えている
掌はむすんだままだ
*
手を打ってやれば紅潮していく君の悲鳴
鴉が夕焼け空に描いた橙色は棄てた恥じらい
捻じれいく塊りは
過去の契りを千切ろうとしている
*
蒸すんでいくのか私の舌に
熱く芯から焦がれていく様に余計悪意が煮えたぎる
蝋燭でさらに燃やしてあげよう
生贄の魔女として
*
股開いて濡れたシーツ
ヴィーナスを運んだ帆立貝の鍵を捨て
泡となって君は幻想の海で泳ぐ
母であり妻であった写真立てを伏せて
*
むすんで ひらいて 手をうって むすんで またひらいて 手をうって、その手を
下に むすんで ひらいて 手をうって むすんで
君と歌おう この唄を
私の肉欲のみにくいあひるの子よ
勝ったほうが先にこの部屋を出ようではないか