再確認
電灯虫

分厚い透明な壁を間に挟んで
僕と彼女は立つ。
一歩の歩幅分を半径として
必要最小限の灯りだけしか
他にはいない。
お互いだけ。
頷き 始めた。
視線を交わす。
胸の上下に動くのに合わせて
一緒に呼吸をする。
分厚い透明な壁越しに
左手を添え 右手を添える。
額を壁に付けて
目も閉じる。
数秒経って目を開ければ
また 視線を交換する。
僕から後ろに下がって
彼女も下がって
照らされた円の灯りの外に行く。
こっち側の暗闇は
光を中心に和らぐけれども
向こう側は見えない。
向こうの真っ暗闇が微動だにしないけど
僕は彼女を見ることをやめない。
暗闇も光も透明の壁の分厚さも追い越せるから
僕は彼女を見ることをやめない。
始まりがあるとしたら
見ることを始めること。
自分発信でも
繋がれるのなら
交信を得る可能性をもらえるなら
物理性を超えられるのなら
僕はやめない。
暗闇にちかちか像を写す。
イメージが外に出てくる。
僕の脳みそは落ち着かない。
「昔」も靴をトントンして出てきたがってる。
こんなにも何かを無造作に求めてる。
自分が自分に求めてる。


彼女が光に戻った。
僕も数秒送れて戻る。
瞬き多くても
黒目を通して視線を感じる。
彼女を見ながら 時計を指差す。
OKサインが出て 彼女が手を挙げ少し振る。
僕も手を上げ細かく振れば
二人は次まで さよならする。


自由詩 再確認 Copyright 電灯虫 2011-06-15 02:37:35
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