空についての四つの短編
石田 圭太









とても固い結晶が
流水よりも早く融けるのを見た

蒸発したあの人の姿は
あの人以外の誰も知らない



釣竿を垂らして
静かな時間と彼方に見えるだろう思い出をじっと待った
煙草の煙を燻らせながらじっと待った
見つめた先では
くらげが力尽きて幾らかの時が経ち
間もなく溶けて海になるところだった







しんしんと雨が降ると
決まって情けない顔の鬼がきて
つぶやいてくる
そこには愛がないねって
正直言って
愛なんて食べたことがないけれど
食べ方だって知らないけれど


雨が降る
見渡す限りの一面に
それでも打たれるものそれぞれに
どこにもかしこにも平等に
降っている事は決してない







どこを向いても地平線しか見えないところがあって
沈みかけた夕日に
幾重にも幾重にも青いカーテンが被さったら
想像通りの夜になる


何光年も遠くから来た光が
その時そこにある
その時になってやっと使える
言葉に羽をつけてみる


ところがどこにも行き場がないので
最終的には送信boxの
空にする
ボタンを押す







何かに答えたくて
とても小さな階段を
駆け足で
一段飛ばしした


ひとつ
だけもらった
使いかけの鉛筆を
出来るだけ
小さな
箱に仕舞い
わずかな時間で
確認した


あの小さな子供の持っていた
あれは
あれは何ていう季節だろう






自由詩 空についての四つの短編 Copyright 石田 圭太 2011-06-13 21:38:32縦
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