緩慢な二〇一一年の六月
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滅びるなら滅びよう
今年も淫らな夏がやってくる
何故生きている
何故?
生きることは
儚い悲しみだ
喜びとないまぜになった悲しみだ
怖いんだ
生きているから怖いんだ
仕切りのない野放図を描き
牛舎のなかで暗闇がいななく
傍らの日向で包丁を研ぐ
日に照らされて刃が僕の眼を裂く
忘れていた名前を唐突に思い出す
話したこともなかった名前を
思い出し後悔する
許されていたこと、許されなかったこと
陰と日向
両方の間を行ったり来たりしながら
黙って笑っていた
セカイはあくまでも自由に振舞っている
空から降る青い翅に
埋もれていく僕を
あなたは遠くから見ている


自由詩 緩慢な二〇一一年の六月 Copyright within 2011-06-12 06:12:16
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