会えない女
はだいろ

あれから、
彼女に、会っていないのは、
土曜日は、用事があるらしかったから、
落語に行って来なよ、と言われて、
ぼくは大手町の落語会へ行ってきた。
きのう、
電話をしたのに、
つながらず、メールもなく、
電話もかかってこなかった。
もっとも、
ぼくは、
携帯の電話やメールを待つのが耐えきれないたちで、
すぐ電源を切ってしまうのだけれど。


これで、すんなり、
別れることになるなら、
それでいいような気もした。
水曜日に、部屋に行くようなことを言ったような気もする。
それなのに、
すっぽかしてほったらかしていたのだから、
大切に思っていないのだと、思われても、
もしかしたら、
事実そうなのかもしれず、
でもだからと言って、
嫌いだとか、いやだとかいうわけでもない。
ぼくは、
ひどいさみしさを、感じるとき、
それがじぶんじしんだと、認識していたのかもしれず、
その認識の懐かしさのために、
ほんとうの愛を失おうとしているのではないだろうか。


そうゆうふうに考えると、
夕ご飯に、
ひとりで、焼き肉をしていても、
おそろしいむなしさや、
自己嫌悪や、
もしかしたら、彼女のことを、
ほんとうに好きになれたのかもしれない、
というような後悔で、
まだ別れてもいないのに、
どこかこころの奥のほうの、行き止まりに突き当たってしまう。


それでいて、
そこが、ぼくの、狂ったところなのだが、
2月を最後に会っていない、
デリヘルのお気に入りの女の子に、
どうしても会いたくなり、
二日つづけて、
めったに出勤しない子なので、
なんとか予約を入れようとしたのに、
結局、予約を取ることができなかった。
かぼちゃを食べようと、
ししとうを食べようと、
焼き肉は美味しかろうと、
ぼくはこのように狂っていて、
彼女が怒っているかもしれないことよりも、
デリの美少女に会えないことのほうが、
はるかに悲しいのだ。


youtubeで、
森田童子の「ぼくたちの失敗」を見る。
なんども、
なんども、
繰り返し見る。
森田童子に、なんの思い入れもないのだけれど。
たしかに、ぼくたちは失敗した。
その悲しみの総体の中に、
ぼくの悲しみもそっと、
しのばせてほしかったのかもしれなかった。







自由詩 会えない女 Copyright はだいろ 2011-06-11 19:51:08
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