日常劇場
電灯虫

冷蔵庫を開けて 牛乳を探す。
パックの底が反抗して牛乳が漏れていた。
紙でできた冷蔵庫に滲みこんで
床まで白くなっていく。
足元までせまってくる白い波に
足の親指たちが浸りそうになった 
まさにその時
相性がいい卵をお尻につけたひよこたちが
颯爽と冷蔵庫のドアから飛んできて
牛乳と和解してくれた。
振り返りざまに和解金の代わりに
コーンを要求してきたので
とんがりコーンで一部を支払って事なきを得た。


いたずら好きなMY車は
今日も鍵穴を隠していて
くそ忙しい朝に限ってするもんだから
KYも塩梅が大事だと運転しながら説教した。
けれども 
クラクション鳴らしてどこ吹く風のMY車は
対向車線のあの子に夢中になっている。
腹立って信号機を見れば
ごきげんなナンバーに乗せて
立ち位置変えて三色で踊ってる。
ノリノリになって四色目を生み出し始めたから
どうでもよくなって
JPOPミックスを流して
ケツを流して右折する。


ナンパしようとした彼女が
ミニスカートを全面展開して回転させ
パンツ丸見えで飛んでいくから
折り畳み傘を取り出し
ハート型の麻酔弾を込めて
スコープで照準を合わせたら
向かいのマンションのベランダで
布団を叩いている奥さんと目が合って
二人とも一目ぼれしたから
発射と同時にマンションの階段を駆け上る。


幼稚園の頃のバザールで
手を離して飛んでいった黄色の風船が
赤色と一緒に頭上をデート中だった。
千載一遇のチャンスとはこのことで
これを逃すと ズボンの裾を掴んだままの
幼稚園の自分が悲しんでお風呂に入ってくれない。
ニトロのエンジンは
今日に限ってメンテナンス中だけど
大人な自分は腰痛の分だけ 自力で高く飛べるので
トランポリンなアスファルト道路を踏み込んで
二,三回の助走ジャンプで勢い付けて
紐めがけて飛んでった。
デートの邪魔はしたくなかったから
二つ掴んで下に降りると
ピエロなお姉さんが作る風船犬が
尻尾を振って僕と一緒に待っていた。
頭を一撫でして尻尾を楽しそうに振るから
三人一緒に 赤と黄色の風船を掴んで 
空気入れを買いに行く。


自由詩 日常劇場 Copyright 電灯虫 2011-06-07 23:38:34
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