もし君が、この話を聞きたくないんならだな、さて、僕がここで生まれたとか、僕の素敵な幼年時代があんな具合だったとか、僕の前にいるリスだかタネキだか、とかなんとか、そんな《サリンジャー》式のくだらない話から聞きたがるかもしれないけどさ、実は、僕はみての通り、うさぎさ、でもってセメント、ほんとは、こんなことしゃべりたくないんだな、第一、すでに、みんな知ってる話しだからさ。連中に比べればまだましだが、まっ、おかしなもんさ。
う?いや、おかしくもなんともなく、うれしいだけなんだ。誰にもなんにも話さないほうがいいなんてことがあるものか。話せば、いいさ。僕から 聞きたくなかった話しを、話しに出てこない連中が現にすぐそこ底かしこまりかしこにいることが、物足りなくなってこないんだから
なあ、僕は阿ト理恵さんの裏庭のどくだみにつかまえられて、身動きとれないのさ、どうする、なあどうする、リスだかタヌキだかわからない目の前の奴、さあ。