誕生日
マフラーマン
赤ん坊のころは一日が途方もなく長かった
太陽の落ちるスピードは メリーゴーラウンドのようにゆったりとして
空の模様は 私が目で追いかけられるほどに やさしく変化した
今よりも朝ごはんは時間をかけて食べていた
ただひたすら食パンを咀嚼していた
朝は忙しいものではなかった
眠気を覚ますための ともすれば心はどこかへ飛んでいってしまいそうな
そういうものだった
ベッドに入るのは決まって夜の九時だった
私は昔 魔法でも使えたのだろうか
その頃になれば 宿題も 時間割も お風呂も
何もかも 用を済ませていた
次の誕生日を指折り数えた夜は
果てしなく長かった
太陽はせわしなく動き出し
天気はいつしか 不意に変わるようになり
一日のなかで 朝は一番短くなって
誕生日プレゼントに執着しなくなったころ
わたしは夜が明るいことを知った
年を重ねることは 特別でもなくなった