軌跡
電灯虫

教室を対角線上に
真っ直ぐと すいっと
紙飛行機は飛んでいった。
この瞬間しか味わえない
手から描くベクトルの軌跡は
初めて感じる創造なんだと確信して。


折って合わせた角がズレていて
ソレが気になるからか
できた飛行機は頼りなく
飛ばす勢いを付けても
飛行機に力が乗らなくて
未だにコツがわからない。
遠くまで飛ぶ折り方があるようだけど
倣っても何故か忘れちゃって
オーソドックスの折り方しかできない。
友達と一緒に飛ばしたとき
ドベかブービーで
雰囲気 壊したくなかったから
笑って悔しがった。
一人だと
数度 遠くまで飛んでいったのに。
「なんで いつも」
国語の授業で愚痴ってた。


家庭科の裁縫の時間も
玉結びもなみ縫いも上手くなくて
放課後残ってナップサックを縫ってた。
後追いが 多分自分の性質だ。
スタートライン後方が
自分の立ち位置なら
僕はいつから走っていれば
いいんだろ。
紙飛行機と縫い針の行方が
重なっちゃってしょうがない。


紙を折る手の表情が違ってて
もう途中にした試作品が転がる中でも
初めて飛ばした紙飛行機を
飛ばした手は覚えていて
薄い一枚の紙に顕れた
僕だけの飛行機は飛んでった。
紙飛行機にこだわる
主たる理由は
手に焼きついていて
多分 後追いで目指すゴールは
皆を超えて そこなんだ。


折って生む
形の重さで
力を乗せられる。
肘をちょっと引いて
前へ。
紙飛行機が飛ぶ。


自由詩 軌跡 Copyright 電灯虫 2011-06-07 01:03:12
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