そんなやり取り
電灯虫

気になるあの子からもらった
角が二箇所内側に折られた
秘密のお知らせ。
開くのが惜しくて
放課後でもまだ読んでいない。
カラーのポールペンで
まるっこく書かれた ぼくは
色合い綺麗で
浮ついてる。
その手紙の有無で
隣のあいつより 幸せになっちゃう。


自宅の机でこっそり開いた 
三行ばかりのあの子は
好きです とは言ってなくて
期待が先行しているから
どうにか解釈できないか
頑張ってみる。


返事をするために
言葉を探すけど
好きって書いたら噛み合わないし
そっけなく書くのもがっかりするし
滲む気持ちをどうしようか。
平安時代には
歌を贈り合って
二人の気持ちを確かめていたみたいで
まどろっこしいや
と 思ったけど
今になって分かりますし 尊敬します。
作品中の人でも
右手に光源氏が降りてくるのを待ちつつ
鉛筆のピストル音は鳴らずに
数回目の「次は書く」を繰り返す


自由詩 そんなやり取り Copyright 電灯虫 2011-06-06 02:18:45
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