影ながら
電灯虫

学校帰りは抑えていた 
わくわくがはしゃぐから
本人達より先走って 
二人の影の一方が遊びに誘い
もう片方の影が誘いに乗って
周りの建物の影と一緒に遊びに行く。


夕陽が帰宅時間の陽光だから
仕事帰りの皆は
電車から降りてすれ違いながらも
お互いに お疲れ様っと
駅の地面にて 互いにハイタッチで労う。


食卓を照らす家庭の光が
長持ちする電球に替えられたから
バラエティテレビの笑い声を聞きながら
キッチンで料理する夫婦の一方に
寄り添うように 他方の配偶者が 
影ながら 側に立って微笑む。


電気消しても
ルームライトで影の濃さが違うから
薄めなのにかこつけて 
パジャマ姿で 
入ったばかりの布団から忍び出て
読みかけの新刊コミックを取って
机の下でコソコソ読む。


横断歩道で 
信号が変わるのを待っている。
右顔と半袖からはみ出た右腕が
陽射しに焼かれる。
後頭部でどうにか陽射しを逃れようと
左を向くと生き生きした 
影がよおっと挨拶してきた。
ういっと返事して 
今日もよろしくと
拳を突き出した。


自由詩 影ながら Copyright 電灯虫 2011-06-05 00:27:49
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