夏の日のポートレイト
山中 烏流




とぼけた顔で写る、家族写真の度
食卓には痛み止めばかりが並び
学生はいない
当たり前に

不親切な人の群れは総じて新宿方面に流れるから
指差し確認の習得は必須条件だった
肌の燃えた日に、少しだけ足は遅くなって
私は水飲み場に消えた

ビート板を細かく千切ったのは、先生、僕です

今月三回目の検診を終えた工藤さんの机は汚い
有名なブランドの鞄の中は
真っ白な海

いずれ大きくなる体を憎む君が
ゆっくりと東京行きの電車へ歩いていく
朝に震える日を繰り返しながら
木漏れ日に沈んで
浄水場で数えた烏の数を
忘れても
忘れても

走る児童の影を追いかけて数年
コップの中身が見当たらない

心臓も肺も、その他諸々も痛むこれから
待合室の匂いが
つん、と一刺し






自由詩 夏の日のポートレイト Copyright 山中 烏流 2011-06-04 12:46:59
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