私の視線
電灯虫

お客様 忘れ物でございます。
振り返ると 拗ねた私が席に座っていた。
すいません ありがとうございます。
お礼をいい 私の手を引く。


夕方 電車に乗る。
空いている座席がなかったので
立っていた。
正面から ビル群の合間を縫って夕陽が射す。
失敗したなと 目を細める。
横に立っていた私は 目を開けて 夕陽を見ていた。


帰りがてら 商店街に寄る。
最近できたスーパーによって
カレーの材料を買う。
買い物かごの邪魔にならないように
私は利き手の反対側から付いてきていた。
時折 姉妹が楽しそうに店内を走る様子を見る以外は
きちんと付いてきていた。


夕飯を済ませて お風呂に入る。
風呂上りに 一杯飲むのをやめて
床に入り 雑誌を読んで一息つく。
豆電気以外の電気を消して 眠りの体勢を取る。
私は 窓際で カーテンも開けずに向こうを見ていた。


こっちを見て欲しくて
そばにいった。
私は カーテンを開けた。
ひやりとする 空気の冷たさがあって
夜があった。
私は 私と
夜を眺めた。
私はこっちを見ていないけど
私は時折 見るから
一緒に夜を眺めた。


自由詩 私の視線 Copyright 電灯虫 2011-06-03 00:38:38
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