ひとつ うつろい Ⅴ
木立 悟






樹と水と夜
波の下の島
森のはざまの道
しじま 明るく


緑の行く末
曇は曇を視る
すぎる狼煙
高く細い声


丸い角が沈み
翳りのなか浮かび
遠い縦の音
消える日をもとめて


冬の手綱 放せば羽に
通りの上の 水の空から
ひとつひとつが 渦の光たち
語ろうとするまぶたを照らす


ふたつの風が並び
水音に昇る
やがてひとつが止み
夜に残される


空の空の高みから
指三本分の広さに降りて
やわらかなひとつの色の跡
空へ空へ震えを返す


姿なきものの会話
どちらがどちらかわからぬ白紙
ひるがえりたなびく午後と夜
ところどころ 見えはじめる風


たどたどしい空洞に
暮れは暮れのまま落ちてゆく
離れても夜はしずくを追う
離れても離れても夜を追う


むらさきがむらさきの坂をおりてゆく
重さを浴びて下がる腕に
雨になれない光のひとつ
語りかけ語りかけ羽になる





























自由詩 ひとつ うつろい Ⅴ Copyright 木立 悟 2011-06-02 23:30:39
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