マリッジブルー
あおば

                110601



パールホワイトの大型車なんかが走っているのは
我が国だけだろう
西欧人からは
なんという非常識な色だと言われそう
新型のフォルクスワーゲンを黄色に塗って
曇りの日でも目立つから安全だと
友は言う
たしかにそうかもしれません
目立つ色は大きく見えて立派に見えて
安心できるのでしょう
梅雨空に花火が上がる
誰かが結婚したらしい
空き缶を従えたイタレアンレッドが走り出す
テープなびかせ
アクセルが踏み込まれ
ライトグレイの雑踏に紛れ
見えなくなった
目立つ色だから
追っかけるのは簡単だよ
君は区界までついて行けよ
悪友を唆したところ
大慌てでメットを掴み駆けだした
押っ取り刀のアイボリーのラビットスクーターが横町から顔を出し
区界への近道を抜け
トンネルを潜り
一足先のイタレアンレッドの前に出る
アイボリーがパープルのように振る舞っていると
勘違いする人にお伝えします
身軽なラビットスクーターは草食系で
追いかけるよりも逃げる方が格好いい
その性質に従い前を走っているのです
性善説を信じている
知ったかぶりの青年が演説をぶつと
音もなく
ブルーのカーテンが降りて
次のカットが始まった
最近は風光明媚なハネームーンも省略し
映像記録で代用する
クロマキー技術に長けているので採用された君は
来るべき熟年離婚を恐れ
週末のスケジュールを充実させようとしている
イタレアンレッドは無理だから
水出しコーヒーの美味しい店を探し
節電を含め倹約できることがないかと
大通りが映り込むガラステーブルにガラパゴスを置き
何台ものイタリアンレッドを走らせる







「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは、yumekyoさん


自由詩 マリッジブルー Copyright あおば 2011-06-01 23:20:24
notebook Home 戻る  過去 未来