すべての明かりが消えるなら幸せだろう
ホロウ・シカエルボク
すべての明かりが消えるなら幸せだろう
あとは目を閉じて
眠りに落ちるだけでいい
だけど明かりを落とせないわけがあるから
俺は
今日の尻尾にしがみつく
眠ってしまう前に
もっといろいろなことが出来る筈だと
もうひとつ何か済ませることが出来る筈だと
腐った気分は正直に
今日と明日の境の上に
並べ並べて列を直して
命のリズムが生まれるように
心のリズムのリアルなままに
あんたが俺になったみたいに
感じてくれたら一番いいんだ
あんたが俺になったみたいに
俺の視界を感じるみたいに
すべての明かりが消えるなら幸せだろう
俺は安らかな寝息を立てて
朝まで恵まれた夢を見るだろう
目覚めたときにはけだるい今日は青空の向こうだろう
塞がった傷に貼った絆創膏をはがすように
すべては更新されているだろう
だけど何かを覚えたままでいる俺は
その新鮮さの中で少し戸惑っているかもしれない
すべての明かりが消えるなら幸せだろう
俺は浮かんだメロディーをハミングしているだろう
今夜振り続いた雨は朝には上がっているだろう
明日なら靴を濡らさずに歩いていることが出来るだろう
天井の鼠たちの足音
子供たちのように全力で生きている
いいんだけどさ
詩人に鼠は合わないぜ
磁石の同じ極みたいに
ぱきーんと跳ねあうぜ
書き終えたら明かりを消すことが出来るだろう
そして俺は明日
これを書いたことを覚えてはいないだろう