壊れた携帯電話のキーを狂ったように叩け
竜門勇気


ワイングラスの中で
溺れてる奴がいたら
助けてやるといい
二日酔いのラジオが聞こえて
三日目まで持たないと
嘆きのまねごとを見せてくれるだろう

退院間近の黒猫が
ギブスを外されていく
だぶった景色は
二律背反に踊る
建設が途中で諦められ
不完成は人混みに紛れ込む

壊れた携帯電話のキーを狂ったように叩け

マインドコントロールは解けてしまったから
真新しい戯れ言を買いに行こう
母親や父親を連れて行けばいい
君の同郷の者はみんな消えてしまった
この町にいるのは余所者だけだ
数式に目がない文学者がそれを半端に振りかざす

攻撃と鎮痛の振動の中
針が往復ではなく回転していることに気づく
激怒の失せた後の笑い顔
やはり君は余所者にはなれない
誰かと手をつないでいるといいだろう
真っ昼間に街を歩いていて
覚醒の中でまた覚醒する事はないか
夢の中で夢を見るように

昨夜の残飯は百年後にまた食卓へのぼる
幻想以外の場所では
僕はそれを口へ運ぶことはない
幻想の代わりにワイングラスを覗き込め
ゆらゆら揺れたら合図だと思え
針の上で見えないダンスを見るだろう

壊れた携帯電話のキーを狂ったように叩け



自由詩 壊れた携帯電話のキーを狂ったように叩け Copyright 竜門勇気 2011-05-29 13:54:50
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