ゴースト、たぶん五月の幽霊
小池房枝

光あれ暗闇もあれビッグバン

天津キツネ二尾を伸ばして駆け抜けた

二億年メリーゴーラウンド銀河系

「アミノ酸あれ」そう云って海に陽が射した

「午後の恐竜」地球カレンダー閏秒

「午後の恐竜」地球カレンダー新年好

たれぱんだおいで素甘を蒸しておく

晴れの国水面の波紋夕まずめ

イルカ供養石碑ヒルガオ咲く浜に

海峡に白きひとひらこのフェリー


山深く遠く高みに泰山木

枇杷の実が遅れて熟れる北斜面

梅雨入りとともに今年も夏椿

春の花すべて腐してさみだれる
 
犬散歩しっぽくるりん雨上がり
 
カプカプと今年も笑えクラムボン

花信風終えて立夏に百花かな

こどもの日こどもらは留守いい天気

休みの日学校兎は小屋に二羽

NLP真昼間っから日曜日


ふうわりと雲の羽衣かぐや月

酔うて赤き李白の大火アンタレス

寝る前に羊が一、二、山頭火

差しいれて腕を斬られてみたい葦

はしはしと風と水とが石叩く

川幅の真ん中の水を飲むツバメ

動かぬ鯉川は流れてるはずなのに

葦原に角ぐむ葦たち背比べ

更衣もう/まだ五月 着重なり
 
ツバメ五羽誰かがまとめて投げ上げた


トランペット川ひとつ越えてやって来る

梶を切るミサゴ尾羽を震わせつつ

ドップラーシフトバイク来てバイク去る

コクリコが真っ赤なままで春が散る

俯いて濡れてるジゼル沙羅の花

雨晴れて星空を開く庭石菖

第四期始祖鳥のようにオナガ跳ぶ

幻日や中也の生地湯田温泉

環天頂アーク山頭火の空に

聞こえてるかパラボラキノコ星の声


キイチゴや小学生の帰り道

桜の実だれか散らかしたマッチ箱

桜しべ身ひとつになって身を投げる

桜の実こつんこつんと風のたび

桜しべ肩にコツンと花梗ごと

暮れ残る万朶 緑の衣通姫

待ち合わせイルカパークで雨の日に
 
白藤がニセアカシアと咲いていた

もうずっと主は留守ですホタルブクロ

花ばさみ持って茨の河川敷


こんな風に空からあふれる水もある

ストリーマー ステップリーダー 天のワルツ

雨音も雨もさえぎるアスファルト

雨水吐ウスイバキばきばきざばざば水を吐く
 
青海波 真縦の龍鱗 甕覗き

青海波 甍の波と雲の波 

颯々と立夏 眼状紋の群れ

さざ波に 触れ返す草の細きすい

遠近おちこちに木漏れ日 微睡みかき混ぜて

種々くさぐさの木霊いつしか異国語も


金色の猫の背中の麦畑

まだ青き猫の背中の麦畑

鬼灯の葉陰あかるく白き花

切り込みの朝顔今年は好きに咲け

漕ぎ進む夏の河原をさはさはと

緑陰の航路われらは潜水艇
 
藤揺れる微かな羽音クマンバチ

赤潮はサクラエビ色 駿河湾

バリカンでまあるく刈り込む新茶摘み

風の手の絵の具の緑もっと下さい


配る手の絵の具みどりが足りません


俳句 ゴースト、たぶん五月の幽霊 Copyright 小池房枝 2011-05-24 22:36:30縦
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