木から生まれた娘
朧月

何のために生まれてきたかなんて
突然わかったり
わからなくなったりするのだろうね
そう木がいいました
木は私が生まれる前からそこにあったので
私が生まれた時から泣いているのが
おもしろくてたまらないそうです

両手を伸ばした位置から
二股にわかれたその木の上に
私はよく座っていました

夕暮れも
たいようが真上にくるのも
そこからみるとたいして
変わりがない色にみえるのでした

どの家にもあかりがあり
呼吸をしている
そうおもうと不思議で
庭先で涼んでいる老婆は
生きているのかしらんと思い
ふうっと息をふきかけて
確かめたくなるのでした

抱きついたつるつるの幹からは
温度は感じられず
それはまた私のほうだったのかもしれません

私はたぶん木から生まれたのでしょう
木に戻ってゆくのでしょう



自由詩 木から生まれた娘 Copyright 朧月 2011-05-19 09:33:12
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