三丁目南バラ公園
テシノ

お前にかける言葉を私は忘れた
その肩の向こうに続く飛行機雲を見た時に
こんなに高い空の下では
自分が何か過ちを犯している気がしてならない
だから今日は嘘を話そう
明日の天気みたいに嘘の話を

並んで歩く二人の間に横たわるかつてが
川霧のように和らいで私達を甘やかす
その行き先を知っているから落ち着いて私達は
爪先に視線を落としてゆっくりと並んで歩く
嘘は風にのせて
風にのせて空へ返すものだと私達はもう知っているから

風が来るのを待っていた

もうすぐあの公園に着く
人々がいなければいいと思う
さざめくような笑い声に私達が負けないように
公園がなければいいと思う
何年もかけて私達は
もうすぐあの公園に着く

かつて
二人が埋めたものが芽吹いたかのように
咲いていた
揺れている
風だ
いつかのさよならだ
今ならば言える
空は広いというように
海は深いというように
もう二度と私は
この肩の向こうに飛行機雲を見ることはない
だから今は丁寧に
その雲の行方をたどる

咲き誇るバラは一際赤く
群青の空に染み付くように
真っ赤な嘘よと手を振りながら
またいつかねと風に言う


自由詩 三丁目南バラ公園 Copyright テシノ 2011-05-18 14:24:51
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