『蛇と芍薬』
東雲 李葉
花首が散らばる。二人の間を埋めるよに。
くすんだ紅を熱心に切り取る君の手は、
不気味なほど白く澄んで。
落ちた首たちにぞんざいに指を食い込ませる。
それがまた絞め殺すような手つきにも似て。
僕は劣情を覚えました。
梅雨時の鬱蒼とした湿度がそうさせたのです。
正常な思考ではありませんでした。
己に言い聞かすようにその行為を咎めると、
君はまた無邪気に悪意を浮かべながら、
僕の愚を見抜いたかのように嗤って、
花弁を一枚口に咥え、ちぎって、捨てた。
花首が散らばる。二人の間を埋めるよに。
くすんだ紅をひとつだけ踏み躙り、
振り返りもせず遠ざかる背中。
繰り返される連続映写。唇に挟んだ紅色を、
頭から丸呑みにする蛇の大口。
僕は再び劣情を覚えました。
今度は紛れもなく自身の意志です。
正常な思考はもはやありません。
己を正当化するように一際ひしゃげた花を取り、
妄冥の中の君を真似て歯を立てると、
苦い苦い砂の味。
頭を無くした僕を雁首揃えて花が見ている。