初恋
たもつ
家族が寝静まった頃
ぼくらはそれぞれの家を出た
ぼくはミルクチョコレートを持って
きみは水筒に氷と麦茶を詰めて
二人で村田川の護岸に膝を抱えて座った
今日は手を握ろう、と思ってきたのに
次から次へと言葉がでるばかりで
そんなことも忘れてしまった
話したいことがたくさんあった
自分のことをしゃべり続けた、初恋
ドブの臭いがした
暗闇は優しく周囲を包み
川の汚さを見せなかった
聞いているきみの顔も
しゃべり続けて泣きそうなぼくの顔も
麦茶はよく冷えていた
冷えた口に放り込んだチョコレートは
うまく溶けなかった
話したいことがたくさんあった
きみも話したいことがたくさんあったはずなのに
自分のことをしゃべり続けた、初恋
きみが何で来たのか考えもしなかった
自分の弱さを正しいものと思い
きみが時折見せる弱さにうろたえるだけだった
最後まで手もつなぐことなく終わった
最後まで何も包み込むことなく終わった
すべて、初恋
もう思い出すこともなくなってきた、初恋