初恋
たもつ

 
 
家族が寝静まった頃
ぼくらはそれぞれの家を出た
ぼくはミルクチョコレートを持って
きみは水筒に氷と麦茶を詰めて
二人で村田川の護岸に膝を抱えて座った
今日は手を握ろう、と思ってきたのに
次から次へと言葉がでるばかりで
そんなことも忘れてしまった
話したいことがたくさんあった
自分のことをしゃべり続けた、初恋

ドブの臭いがした
暗闇は優しく周囲を包み
川の汚さを見せなかった
聞いているきみの顔も
しゃべり続けて泣きそうなぼくの顔も
麦茶はよく冷えていた
冷えた口に放り込んだチョコレートは
うまく溶けなかった
話したいことがたくさんあった
きみも話したいことがたくさんあったはずなのに
自分のことをしゃべり続けた、初恋

きみが何で来たのか考えもしなかった
自分の弱さを正しいものと思い
きみが時折見せる弱さにうろたえるだけだった
最後まで手もつなぐことなく終わった
最後まで何も包み込むことなく終わった
すべて、初恋
もう思い出すこともなくなってきた、初恋
 
 



自由詩 初恋 Copyright たもつ 2011-05-16 22:11:35
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