2011年3月18日
壺内モモ子

3月18日
かかりつけの産婦人科にて、妊娠していることが発覚した。
5週2日だった。

エコー写真に写る、虫みたいな黒い影。
「これが胎嚢です」と、聞いたとき、
診察台の上で
鼻を膨らませた。
目が飛び出そうだった。
声を出さずに「うわあ」という口の形をした。

診察が終わると、先生は、笑顔でこう口にした。

「まだ小さな袋しか見えませんが
 この子は、3月11日の大きな大きな地震も
 あなたのお腹の中で、耐えてきました。
 きっと丈夫に育ちますよ」

とても
とても
暖かい気持ちになった。

そして
不思議な気持ちだった。
私の方が、お腹の中の子に支えられてるみたい。

小さな小さな袋なのに
あの日、朝まで電気がつかなかった真っ暗な部屋を
床に、仕事の書類や、割れた食器が散らばったままの部屋を
私のお腹の中で照らしてくれた。
1週間経った今日まで気が付かなかったけど
ありがとう。

ありがとう。

早くまだ名前のないあなたの名前を
大きな声で叫びたい。


自由詩 2011年3月18日 Copyright 壺内モモ子 2011-05-16 15:48:27
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