どこかで
砂木

杉林 針葉の緑をすり抜け 
どこからか 舞い落りた白い花弁が
木蓮の紫の蕾近くを行き過ぎ
日陰に残る雪より先に 土に落ちた

山の 日が射す場所は暖かく
雪で登る事が難しいと思っている間に
山桜は満開になり 散って
風の便りが ひとひら 届いた
すべての木が豪雪に 負けたわけではないと
小さなやわらかな言葉

その姿を見ることはできないけれど
咲く事と散ることが伝える生命の伝言

雪と泥と 春風の冷たさに
水色を染めるうぶな喉を開けずに
口篭る 固い木蓮の蕾

色づいて落ちたら 春
風が頬を包む







自由詩 どこかで Copyright 砂木 2011-05-15 10:07:56
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