犬も歩けば棒に当たるそうです
たもつ

 
 
犬も歩けば棒に当たるそうです
眠ることが下手な人が
こっそりと教えてくれました
でも、僕は何もしてあげられません
犬が棒に当たる様子を黙って見ているか
背後にその音を聞くくらいのことしか
僕にはできません
できないのです
それでもせめて前もって
棒を抜いておいてあげれば良いのですが
すべての棒を抜いておくことは不可能ですし
すべての棒が抜いて良いものとも限りません
その棒がなければ困る人もいるでしょう
その棒がなければ困る犬もいるでしょう
犬が棒に当たれば棒だって多少は傷つくでしょう
もし犬と同じように命などがあれば
痛みだって感じるでしょう
だからせめて僕は願います
犬が棒に当たらないことを
この話が嘘である、
ということを本当は願いたいのですが
それではこの話を教えてくれた人が
嘘つきになってしまいます
僕は嘘つきは嫌いではありません
嘘をつくにはやむを得ない理由があるからです
あえて僕は断言します
理由のない嘘などこの世にはない、と
根拠も無く言います
理由のない嘘などこの世にはない、と
僕は願い
僕は願いません
近所から新聞受けを開ける音が聞こえてくる
まだ薄暗い、そんな明方です
どうか、犬が歩いても棒に当たりませんように
走っても棒に当たりませんように
もし当たったとしても
その何倍もの良いことが犬や棒にありますように
どうか、これからの時間
ほんの少しでも上手に眠れますように
 
 


自由詩 犬も歩けば棒に当たるそうです Copyright たもつ 2011-05-15 05:54:45
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