ひとつ うつろい Ⅱ
木立 悟




花で描かれ
置いていかれる
地獄に触れては
熱い耳たぶ
冬の冬の土を聴く


呼ぶ声は雨
冬と春の葉
水と夜の
はざま進む針


夜とは寸分違わぬ夜が
夜の隣に踊っている
やわらかな辞典
言葉の氾濫


とどかぬように火はとどき
花は午後へほどけている
色も 色以外も
すべても すべて以外も


及ばぬものどうしが歩み
穏やかさは悔いる
外から来たものばかりが猛り
音の壁に積み重なる


ひとりはひとりに流れ着く
やや広めの光の板
粗く消えかけた
二番めの蒼


夜が朝に
息を吹き込む
撓り また戻り
音はさらに遠去かる


夕空の
白い鱗
ただ白い
跡の跡


春の霧と無
距離も時間も
静かな網の目
ひとつだけ 通る


枯れた花に花は降り
曇は水に増えてゆく
澱みの行方 澱みの飽和
鏡に帰し 鏡をなぞる


影がめくる花
降りやまず
午後の坂 高く
歩むもの皆 
羽を土に置いてゆく


























自由詩 ひとつ うつろい Ⅱ Copyright 木立 悟 2011-05-13 23:08:44
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