光は赤いのが好き
アオゾラ誤爆
トマトジュースの喉ごし、気に入らないざらついた酸味、砂場まで走っていこうなんて考えていた、朝焼けのうすいひかりは手抜きの水彩みたいだから。もっと冷やして、かたくして!直視する鉄棒の錆、むかし好きだったひとのことを考えながら蛇口をひねる、手首、どうでもいいんだ、手首。じゃばじゃばと落とされていく透明の痕跡が、まるで昨日(或いはあした)なんてなかったかのようにアスファルトを濃くする。排水、排水、公園の片隅、結局読まなかった古本は積まれてちいさな日影をつくっている。まだ薄い、全然薄い、踏み壊してもいい?――ばさばさの髪をかきむしったらまたすこし刺さる、ぷつり、波縫いは得意じゃなかったんだ、すぎていく時間とブレる視界がわずらわしくて、ぷつり、ジッセン、破線、点線のようだな、この信号。ぷつり、刺さる。痛いのとは違っていて、驚くのとも違う、もっとこう直接的な何か、そこに距離なんてものはない、ぷつり、刺さる、赤い。パレットから流れてくる無調整のまぶしさ、光っていうのはつまりはそういうことだったんだろう、赤いのが好き。ひたすら白くて明るいのに目蓋の裏まで塗りつぶされているのはどうしてだろう――鈍行、通過する。橋の向こうへ。くちびるをぬぐう、なにかおかしくて歯を出してわらう。これは傷口じゃないから。まばたきをして、乾いていく、ざあざあと揺れる木々、空気の切っ先は研がれて鋭く。耳障りな風の音、びゅうびゅうと鳴っている時計のした、水のない池に落ちている小石をあつめて、円くきれいに並べる。手厚く葬るように空き缶はその中央に捨てる