『帆翔』
東雲 李葉

色とりどりの洗濯物が風にたなびき揺れている。
風の通り道。白い壁に囲まれた路地裏を駆け抜けて。
視界の端の景色を過ぎ去り私は小高い丘へ出る。

そこからの眺めといったら!

空の高さと海の青さに肩を震わせ、声のかぎり叫び泣く。
壁の窓からいくつも頭が覗いていても、私は構わず泣き続ける。
まるでこの瞬間に生まれたように。

夢の中で私は世界を旅する帆船だった。
正確にはたなびく真白い帆だった。
どんな風も操って名も無い土地へと彼らを運び、
どんな嵐も耐え切って先へ先へと体を進めた。

今この時、私は一反の帆として生まれ変わる。
産声が一面に響いた頃、急に体が軽くなり、手足が薄く広まってあの雲のように白く染まった。

この胸の高鳴りといったら!

海の青さがより近く、空も風もより密に私の中へ入り込む。
私は再び大きな大きな声で泣き、
壁の窓から覗く頭に体を揺らして別れを告げた。


自由詩 『帆翔』 Copyright 東雲 李葉 2011-05-12 21:29:06
notebook Home