わたしはおんなでいたくないのです
ゆるこ




私はもう、おんなでいたくないのです



夜中になる前に、
私がまずすることは
夜の空気に右腕を入れること
ぐるぐると掻き混ぜると私と化学反応をおこすので、そこでゲル状になる
六畳の和室の布団には、私の息子が置かれているので
ひっそりと、
横に寄り添うのだ

そうしていると
夜中の闇から夫が
私専用のスコップと、
百円均一で買ったアルミ箔のトレイを持って出てくるので
私はようやく安心するのだ




わたしは、おんなで、もう。







たまに、頭のにおいを嗅ぐのだけれど、
赤ちゃん用シャンプーのにおいと、
少しだけ、思春期のにおいがする
だけど、口元のかおりは、
どうしたって
私の内臓のかおりがぷんぷんするのだ
だから私は口元にたかり、
胎児のように屈んで
静かに、静かに、
息子に寄り添うのだ


息子は私を追えない
視力0.1の世界に、
私は存在したくない






わたしは、おんなは、もういやです

わたしは、ただ、

わたしは、

わたしは。




自由詩 わたしはおんなでいたくないのです Copyright ゆるこ 2011-05-12 10:40:04
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