わたしはおんなでいたくないのです
ゆるこ
私はもう、おんなでいたくないのです
*
夜中になる前に、
私がまずすることは
夜の空気に右腕を入れること
ぐるぐると掻き混ぜると私と化学反応をおこすので、そこでゲル状になる
六畳の和室の布団には、私の息子が置かれているので
ひっそりと、
横に寄り添うのだ
そうしていると
夜中の闇から夫が
私専用のスコップと、
百円均一で買ったアルミ箔のトレイを持って出てくるので
私はようやく安心するのだ
*
わたしは、おんなで、もう。
*
たまに、頭のにおいを嗅ぐのだけれど、
赤ちゃん用シャンプーのにおいと、
少しだけ、思春期のにおいがする
だけど、口元のかおりは、
どうしたって
私の内臓のかおりがぷんぷんするのだ
だから私は口元にたかり、
胎児のように屈んで
静かに、静かに、
息子に寄り添うのだ
息子は私を追えない
視力0.1の世界に、
私は存在したくない
*
わたしは、おんなは、もういやです
わたしは、ただ、
わたしは、
わたしは。