悲しいパズルの歌
橘あまね

日々
パズルのピースはかわっていく
何が昨日とちがうか
気づくこともなく
うつっていく

定められた正しさのもとで
裁かれて
選別されて
つぐなうつもりで傷をつけあい
悲しみを深め
くらやみにおびえて

それでも生きていかなければならないのなら
きっと、そこに歌が必要です

ほんとうは大事にしたかったのに
痛みの記憶が
僕たちを自由にしてくれないので
大事にできなかったものたちのことを
歌いたいと思う

泣いている子は、僕だけと思ったけれど
ほんとうは
ほんとうに
みんながそれぞれ悲しくて
涙をこらえられない子
涙をこらえたかわりに
誰かを泣かせてしまった子

ぜんぶまとめて、
愛してあげられたらいい
殺すことができないから
愛してあげられたらいい

愛させてもらえるだろうか
憎しみを解きほぐして
ぬくもりを蘇らせることが
できるだろうか

生まれ落ちたとき
僕ら
みんな精いっぱい泣いたんだ
生きていることの全てを
そのときに知ったのに
忘れてしまって
忘れたことさえ忘れてしまって

使えなくなったピースを
嵌め込もうとするのに
叶わなくて
一つ二つ
握りしめ
力いっぱい放り投げて

寂しさに耐えられなくなったころ
また拾いにいく


自由詩 悲しいパズルの歌 Copyright 橘あまね 2011-05-11 09:45:36
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