髪の栞 
服部 剛

古書店で偶然みつけた 
昭和二十一年の「 四季 」という詩誌の 
頁を開くと、誰かの髪の毛が一本 
栞になって挟まれていた 

「 すて椅子 」という題の詩の中で 
公園に置かれたすて椅子の上に 
置き忘れた花束を 
通り過ぎの詩人が足を止め、みつめていた 

頁を閉じるや否や 
一本の髪の毛は、ふっと 
この手元から滑り落ち、姿を消した 

名も知らぬ昔の人の 
見知らぬ生が、そっと何かを告げるように 
平成二十二年の僕の手にする「 四季 」が 
微かに重みを、増した 








自由詩 髪の栞  Copyright 服部 剛 2011-05-09 23:48:55
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