カタツムリの家
たもつ
橋の上で兄は星を数えていました
すぐ横で私は橋を数えていました
星は数えきれないほどたくさんありました
橋は私たちのいた橋ひとつだけでした
何度数えてもひとつでした
それが兄と私との縮まらない距離でした
時間になると私たちは
同じ家に帰りました
それぞれの姿勢で
父と母が待っていました
台所や風呂場の狭い借家でした
雨が降ると
生きたカタツムリの臭いが
微かにしました
大人になって兄は
橋を架ける仕事に就きました
数年後に大人になった私は
椅子に座っている人と
話をするようになりました
時々、椅子と話をしたくなります