エタニティ
小川 葉
カルヴァンクラインの
エタニティという
香水の匂いがした
夕暮れ前の下町で
前を走る
自転車の奥さんは
推定四十歳前
最近できた
あのお洒落なマンションの
住人に違いない
と、思ったら
その方へ曲がったのだった
自転車籠にたくさんの
買い物を揺らして
妻にもエタニティを
プレゼントしたことがある
けど、好きじゃないから
一滴も使わなかった
それでこそ
わたしの妻だ
日が暮れた
暗闇の向こうから
自転車籠を揺らして
帰ってくる
それが
わたしの妻だ
汗の匂い以外に
何もしない
永遠の
わたしの妻だ