公園の風
たもつ

 
 
公園の風に
子どもたちが落書きをしている
落書きは異国の文字みたいに
すぐに形を崩し
消えてしまう

ぼくはすぐ近くで
地図にも載っていないような小さな紙を
呟きよりもさらに小さく
破り捨てている

宝くじが当たったんだよ
父はそう言い残して
車椅子のまま
母とぼくと犬を置いて
家を出ていった

母は新種の虹を探しに
ぼくと犬を置いて
家を出ていった

犬はぼくを置いて
家を出ていった

落書きに飽きた子どもたちが
滑り台の階段を上っていく
どこまでも上っていく

危ないから早く滑っておいで
そんな言葉が喉まで出かかったのに
喉がどこにあるのか
むかしから見つからない
 
 


自由詩 公園の風 Copyright たもつ 2011-05-06 22:37:36
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