緑の夢
未有花

僕の頭の上では
さやさやと木々のささやく声
風はやさしく髪を撫でて行き
時折聞こえる鳥のさえずりに
僕の夢はうつつをさまよう

僕はいつもここで夢を見ている
心地良い木の肌のぬくもりに背を預けて
僕の夢は未だ深い森の中
目覚めてはいけないと誰かの声がして
僕は素直にその声に従っている


果てしない緑に抱(いだ)かれて
僕は数億年前の樹海を旅する
むっとするような森の匂いと
圧倒するような生命力に目眩を感じて
僕の体は大地に崩れ落ちて行く

このまま下へ下へと沈んで行けば
僕はまたひとつの種となって
大地から芽を出す大きな樹になるだろう
高く高くあの空まで伸びて行って
枝をどこまでも広げて世界を覆い尽くすんだ


まぶたを移ろう木漏れ日の影
きっと目を開けば
まぶしい光が飛び込んで来るのだろう
いたずらな妖精に邪魔をされても
僕の眠りは妨げることができない

僕はまだここで夢を見ている
永遠に終ることのない緑の夢を
目覚めてはいけないと誰かの声がして
出口のない森をいつまでもさまよっている


自由詩 緑の夢 Copyright 未有花 2011-05-06 09:09:37
notebook Home