失語
高梁サトル
眼を閉じて
碧と藍が交わる水平線を探すとき
きっとそれが
二人を隔てたはじめてのものだと思った
そのあわいの水面を撫ぜる風の音
海鳥の声が窓辺に届くたびに
傾ける耳の奥に渦巻く暗い思い出
深海に沈んで横たわる結晶は風化することがない
浸した蒼い指先の輪郭が薄れ
街角の標識が塗り替えられて
朝ごと昇る太陽が
生まれ変わったかのように感じても
美しく感じるそれはそう望む私自身のものだと
知っている
未知はここにない場所から生まれる
無知はここにあるものをあらわす
手放さなければならなかったものたち
まばゆい楽園は愛を語る
あなたのなめらかな幸福が
骨になった過去を責めて
どうやって交わることができるだろうかと
苛まれる日々をご存知だろうか
失くしたものは取り戻せない
ならば私は生きるために
生きるために選ばなければならない
それさえも許されないのなら
存在する鼓動も涸れ果てる他ないと