グミ
葛西曹達
グミを食べているときは
世界で何が起こっているかなんて
考えもせず
ただ幸せな気分に浸っている
「必要とされ 必要とする」という
かくも疑わしき言葉に
涙を流したこともわすれ
ただ ありのままを噛み締めている
開き直る深夜1時
僕の幸せはあと3粒で消える
遊んで疲れて眠るだけの体に
なぜこんなに意味を持たせたがる
袋に手を伸ばす一瞬も
意識は常に空の上
ただ甘い香りだけが
口いっぱいに広がってゆく
本当はすっかり空っぽで
本当はとっても卑怯で
本当はいっつも怖くて
本当はやっぱり嫌いで
でも仮面は笑顔のまま
偽者の声をしゃべり
都合のいい耳を持ち
曇ったレンズで世界を覗く
グミを食べているときは
ほら この顔
僕の本当の顔
本当の感覚
こんなときにしか
本当の僕に出会えない僕って
いったいなんなのだろう
いったいなんなのだろうか