真夜中
浩一

真夜中
静寂に耳をつかまれる

今夜は 星も
月も風も犬もない

どこかの
高い塔の
窓の暗闇から ひっそりと 
花びらを撒くひとがある

それは恋をするむすめ
それとも
もう愛を妊まない石女?

そしてとおく
ちんもくした獣たちの森の
内蔵のなか
いっぽんの
無意味の川が流れている

すでに叫ぶものも
たえはてた
盲目のさかなさえ棲まない
いっぽんの運命の川が流れている


自由詩 真夜中 Copyright 浩一 2011-05-02 12:55:50
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